副鼻腔嚢胞は,術後性嚢胞を含めると上顎洞嚢胞が最も多く,ついで前頭洞,筋骨洞の順であるといわれる.とくに前頭洞嚢胞は約半数の症例において副鼻腔手術の既往がなく,眼部症状を初発症状とし,鼻症状を欠くため,眼科を受診することが多い.最近,われわれは,眼球突出,複視を主訴とした巨大前頭洞嚢胞を経験したので報告する.症例は69歳,男性.徐々に進行する右の眼球突出と瞼裂低位がみられ,複視,流涙を来すようになり,近医眼科を受診した.術前MRIにて右前頭葉を圧排,右簾骨洞,眼窩に進展した巨大前頭洞嚢胞が確認され,手術目的にて当科紹介となった.手術は両側前頭開頭にて嚢胞切除を行ったが,前頭葉硬膜と嚢胞壁の剥離が困難であり,一部硬膜損傷を来した.嚢胞切除後は一部残存する菲薄化した前頭洞後壁を除去,前頭蓋底と副鼻腔を遮断すべく,頭蓋骨膜弁を挙上,再建を行った.術後,一時的に前頭葉徴候がみられたが,術前に見られた眼症状は消失し,整容的にも満足する結果が得られた.
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