当科で導入している短期入院を目指した原発性肺癌手術クリニカルパス (CP) にそぐわない症例を選別すべく, 適用した103例を検討した. 退院可とする基準は, 室内空気下でSpO2が93%以上で感染徴候なしの場合, ドレーン抜去 (基準 : 空気漏なく, 排液量250ml/日以下) 翌日とした. 術後10日以内での退院を目標とし, 術後在院日数11日以上をバリアンスと定義した. バリアンス発生要因の詳細について検討した. さらに, 年齢, 性別, 術前PS, 臨床病期, 術前併存疾患の有無 (呼吸器系その他), 術前肺機能, 術前血液ガスデータ, 導入療法の有無, 肺切除量, 拡大手術 (胸壁, 鎖骨下動静脈, 横隔膜合併切除や胸膜肺全摘術) の有無, 気道形成の有無の各因子について, バリアンス例と非バリアンス例で比較検討した. バリアンス例を27例 (26.2%) 認めた. バリアンス発生の主な原因としては, 肺炎が7例, ドレーン排液過多が5例, 肺瘻遷延が4例, 労作時低酸素血症, 難治性不整脈, 心不全, 白血球高値遷延が各2例であった. バリアンス発生の有無を目的変数とした単変量解析では, 性, 術前VC, FEV1.0%, %FEV1.0, 臨床病期, 拡大手術の有無, 気道形成の有無につき有意差を認めた. さらにこれら7因子を説明変数としたロジスティック重回帰分析では気道形成の有無のみがバリアンス発生との関連が有意であった. 術後10日以内の退院を目標としたCPは, 病期の進行度を問わず, 高齢者や低肺機能患者にも適用できるが, 気道形成例では適用は困難で, 別のCP作成が必要であると考えられた.