薬剤試験を目的として病原菌の生育過程を同一実験系で観察しうる方法を検討した. その一例としてタマネギりん片上にイネいもち病菌の胞子懸濁液を点滴し, 25℃の湿室状態に保って, 本菌の生育過程を観察したところ, タマネギりん片上で生活史の各生育過程を演じることを知った. すなわち, 分生胞子発芽は3時間前後からはじまり, 5時間で90~100%に達した. 付着器形成は約3時間半後からはじまり, 5時間で70~89%, 20時間ではほぼ100%に近かった. 顆粒化は22時間後からおこり, 組織内への侵入は24時間後から見られ, 27時間後では約80~90%観察された. 菌糸は24時間で著しく伸長した. 胞子形成は2日目から4日目にかけて増加した. また各生育過程の途中, 水滴を除き, 約15分後に再び水滴を同一場所に点滴した. この操作によって本菌の発育は抑制されず, むしろ良好となった. 薬剤による阻害実験に本法を適用しうるので, 本法を“タマネギ剥離表皮検定法”としたい.