未成熟期,無発情期,発情前期ないし発情期,発情休止期,妊娠期及び分娩後修復期の各時期に属する健康犬の腟内に自然発症例の犬子宮蓄膿症から分離した大腸菌を接種したところ,各時期において子宮内移行が証明できた。なかでも,発情前期ないし発情期のものは発情休止期のものに比べて移行率が高く(P<0.05),子宮内に比較的長く残留する傾向を示した。これらの内には急性子宮内膜炎像を示すものもあったが,少なくとも接種後5日までには全例において菌が検出されなくなり内膜炎像も認められなかった。また,交配に先駆けて大腸菌を接種したものでは正常に妊娠し,子宮内膜炎や胎盤炎は起らなかった。これらのことから,正常健康犬では交尾等によって子宮内へ細菌が容易に移行する可能性が示されたが,細菌が子宮内で定着し,子宮内膜炎を起すには至らず,子宮内膜炎が誘起されるために何らかの別な要因が関与する可能性が考えられた。
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