Abstract

潰瘍からの出血が疑われる場合に はまず全身管理により循環動態を安 定させ,内視鏡検査などで出血の有 無を確認する.止血が確認できた後 に NSAID や H.pylori 感染を確認 の上,原因に応じた通常の胃潰瘍治 療方法を選択する.H.pylori 関連胃 潰瘍は感染確認が診断の基本となる が,診断法としては胃生検材料を(1) 培養法,(2)組織鏡検法,(3)RUT(rapid urease test)などで調べる侵襲的方 法と(4)抗体測定法-血中・尿中,(5) UBT(urea breath test),(6)便中 H.pylori 抗原測定法などの非侵襲 的診断法がある.検査法の選択に はそれぞれ特徴があり,その長所短 所を理解したうえで施行する必要が ある(表1).治療に際しては胃潰瘍 診療のフローチャートを参照される とよい(図2). 1. 出血性胃潰瘍 出血性胃潰瘍は放置するとショッ クとなり,時に致死にも至ることも ある.そのためショック状態にある 患者には原則としてショックに対す る処置を行いバイタルサインの改善 を認めた後に内視鏡検査や内視鏡治 療を行う.内視鏡検査時はまず出血 の部位,原因,出血の状態,露出血 管の有無などを確認し,潰瘍に凝血 塊などが付着している場合には積極 的に除去し正確に評価する必要があ る.内視鏡的止血治療には多くの方 法があり,いずれも内科的治療単独 に比べて初回止血,再出血の予防, 手術移行率の面で有効とされてい る. 加熱凝固止血―レーザー照射,高 周波凝固術,ヒー タープローブ法, アルゴンプラズマ 凝固法 薬物的止血―高張 Na エピネフリ ン(HSE)局注法, エトキシスクレロー ル局注法 機械的止血―クリップ法 近年クリップ法の再出血予防効果 が優れていると報告されているが 他の手技に比べ煩雑であるため,す べての出血性潰瘍に有用な方法とは 言えない.内視鏡治療後24時間以内 胃潰瘍診療のガイドライン 井 上 雅 文*,岡 田 裕 之,河 原 祥 朗,川 野 誠 司,山 本 和 秀

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