Abstract
症例は75歳男性. 糖尿病腎症のため1988年より血液透析を開始. 以後月一回の12誘導心電図, 年一回のホルター心電図では異常を認めなかった. 1991年4月28日前回透析終了47時間後に自宅にて意識消失し, 救急車にて来院. 入院時は意識清明で, 心電図も異常なく, 心筋逸脱酵素, 血中ジゴキシン濃度の異常なく, 血清Kは5.9mEq/lであった. 入院後 (前回透析終了後52時間) に再度意識消失し, 心停止, 呼吸停止状態となり, 心肺蘇生, 緊急ペーシングを開始し救命した. 後日行った電気生理学的検査で, 自発心拍のヒス束心電図では, split Hの所見を呈しA-Hは130msec, A-H'は40msec, H'-Vは55msecであった. 130bpmの心房ペーシングを行うとH'以下がブロックされ, 25bpmの補充調律の完全房室ブロックとなった. ペーシング停止後もH'以下のブロックされたII°の房室ブロックが続いた. 以上の所見からヒス束内ブロックと診断しVVIペースメーカーを植え込んだ. 本例の透析導入時のBモード心エコーでは僧帽弁輪後尖側のみに石灰化を認めていたが, ペースメーカー植え込み時には僧帽弁輪から弁尖までmassiveな石灰化を認め, 僧帽弁閉鎖不全兼狭窄症の状態であった. 透析導入時よりの副甲状腺ホルモンは正常範囲であったが, しばしばカルシウムとリンの積は高値であった. 本症例は急速に進行した僧帽弁輪石灰化に伴うヒス東内ブロックによる心停止と考えられた. 高度の僧帽弁輪石灰化例では, 頻回の心電図検査でも予知できない心停止がおこりうることから, 積極的に電気生理学的を行うべきである.
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