2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,津波によって甚大な人的・物的被害が生じた.津波被害把握には衛星可視画像の利用が容易であるが,夜間には撮影することができず,空白の時間が生じる.一方熱赤外センサは,空間分解能は劣るが,夜間でも撮影可能であり,温度分布により津波浸水地域の把握が可能と考えられる.本研究では,地震前後のASTER熱赤外バンド画像を重ね合わせ,温度の差を取ることにより浸水被害地域の抽出を行った.これを同時期のフォールスカラー画像,および国土地理院により作成された浸水マップと比較した結果,昼夜を問わず比較的良好な抽出結果が得られることを確認した.また,同時期のNDVI画像と比較した結果,熱赤外画像は解像度は劣るものの,湛水域の把握においてはNDVI画像と高い相関があることが確認でき,その利用は津波のような大規模災害においては有効であることを確認した.