水中の微量重金属をジェチルジチオカルバミン酸(DDTC)キレートとしてクロロホルムに抽出,抽出液をミクロ高速液体クロマトグラフに注入し,溶出液中のキレートのピーク面積から同時に定量する方法を開発した.試料水50mlに0,05M Na-DDTCと塩化カリウムを加え,pH8.5に調節した後,クロロホルムで生成したキレートを抽出する.抽出液の0.4μlを日本分光SC-01オクタデシルシリルシリカゲルカラムに注入し,メタノールー水-酢酸エチル-0.05M Na-DDTC(容積比66:24:5:5)を移動相に溶離を行い,溶出液の265nmにおける吸光度を測定すると溶出ピークの面積から,それぞれの金属を定量できる.検量線は(0.5~10)μg/mlの金属濃度範囲で原点を通る直線となり,検出限界(S/N=3での値)は鉛(II),亜鉛(II),銅(II)のそれぞれは0.5ng,0.5ng,0.2ngであった.カドミウム(II),鉄(III),コバルト(II)の共存下にこれら元素は回収率(98~101)%,変動係数は平均3.7%で定量可能であった.実際分析として河川水に適用して,原子吸光法による定量値とよい一致が見られた.