前報までの熱処理に関する研究によって, 著者は湿熱処理乾熱処理によりナイロン6の結晶度は増加するが, 同時に湿熱処理では染料拡散係数が著しく増し, 乾熱処理では減少の傾向を示すことを認めた。この現象について, 著者らは熱処理による非晶域の分子配置の状態, 充てん度の変化として説明し, 非晶部水素結合数の変化を推論した.本報告は熱処理ナイロン6の重水素化によって得られる赤外スペクトルを定量し, 上記説明を裏づける結果を得た.すなわち厚さ10-20μ のナイロン6フィルムを気相で重水素化し, 得られたスペクトルのN-D伸縮バンドの積分強度と厚みから絶対強度を求め, これを非晶度で割った値を非晶部分単位体積あたりの重水素化せられたunbonded N-Hの数を示すものとした。この結果は湿熱処理の温度の増加とともに増加し, 乾熱処理では減少の傾向を示す。したがって湿熱処理では水素結合を形成したNHCO基の減少, すなわち網目数の減少, また乾熱処理では増加の傾向のあることが示された。
Read full abstract