リンゴ'つがる'および'ふじ'の果肉のカテキン類, プロシアニジン類および数種の主要フェノール物質を比色法, TLC法およびHPLC法により分析し, 果実の発育中の含量・組成の変化を調べた.1. 両品種の果肉のポリフェノール成分はプロシアニジンポリマーが最も多く, 酢酸エチルで抽出される比較的低分子のフェノール物質においては, 主要な成分はクロロゲン酸, 他のヒドロキシ桂皮酸エステル類, (+)-カテキンおよび(-)-エピカテキン, プロシアニジンオリゴマーおよびフロリジンであった.2. 受粉後30日(以下, 30 DAP)から成熟期にかけての果実肥大に伴い, 果肉100gFW当たりのカテキン類とプロシアニジン類の総量(総カテキン単位含量)は減少したが, 1果当たりの総カテキン単位含量は両品種ともに果実発育中に増加した.3. 30 DAPの果実におけるカテキン・プロシアニジン類の構成は両品種ともにオリゴマーは少なく, 単量体とポリマーの占める割合が高かった.また, 両品種ともに1果当たりのカテキン単量体およびプロシアニジンオリゴマー含量は果実発育中期に多くなり, 以降, 成熟期にかけて減少し, ポリマーについては成熟期まで増加する傾向が認められた.4. 品種間差異として, 'ふじ'においては(+)-カテキンおよびプロシアニジンB1の含量が'つがる'に比べてやや多く, また, 'ふじ'は'つがる'よりクロロゲン酸含量が顕著に多く含まれ, 発育中に増加した.以上より, リンゴ'つがる'および'ふじ'果実のフェノール物質は組成成分の含量に若干違いが認められたが, 両品種ともに発育中においてカテキン・プロシアニジン類が生合成され, 発育中期には単量体およびオリゴマーが増加し, これらの成分は成熟期にかけてプロシアニジンポリマーに変化するものと考えられた.
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