本研究では, 漢字とその英語翻訳語の対連合学習課題におけるイメージ媒介方略の有効性を検討した。被験者は, 漢字の学習経験のない非漢字圏日本語学習者であった。実験1では, 漢字の形態と英語翻訳語のイメージとがどの程度容易に結びつくかの指標である漢字の「形態イメージ性」とテスト時期との関わりから, イメージ媒介方略群と単純リハーサル群の記憶成績を比較した。その結果, イメージ媒介方略が, 形態イメージ性の高低, テスト時期にかかわらず, 単純リハーサルより成績が良いことが示された。また, 形態イメージ性の高い漢字のほうが, 低い漢字より記憶成績が良いことが示された。実験2では, イメージ媒介方略群として, 検索手がかりのイメージを絵画呈示する群 (外示的符号化群) と, イメージ教示によって生成させる群 (内示的符号化群) とを設け, 非イメージ媒介方略群との比較を行った。その結果, 形態イメージ性の高低によって, 各記憶方略群で記憶成績に異なった傾向が見られた。本研究の結果は, 対連合学習におけるイメージの機能の観点から考察された。さらに, 非漢字圏日本語学習者の入門期の漢字学習において, イメージ媒介方略が有効であることが示唆された。