Abstract

本研究の目的は,同一個人の上肢および下肢のSSC運動における力発揮特性を各部位のStiffnessと関連づけながら検討することによって,それぞれの部位における力発揮の相違点を明らかにすることであった.そのために,大学陸上競技部に所属する男性14名を対象に,上肢ではプッシュアップ運動,下肢ではジャンプ運動を,それぞれコンセントリックのみの条件,およびカウンタームーブメントとリバウンドの2種類のSSC条件で行わせ,各試技における短縮局面のMean force, Augmentation(コンセントリックのみの運動に対するSSC運動におけるMean forceの増加率)および上肢および下肢のstiffnessなどを算出した.主な結果は,以下の通りである.(1)上肢および下肢の運動ともに,Mean forceはSSC運動がコンセントリックのみの運動と比較して有意に高値を示したが,Augmentationは上肢が下肢と比較して顕著に低値を示した.(2)リバウンド条件では,上肢の運動においてはstiffnessとMean forceおよびAugmentationとの間に有意な負の相関関係が認められたが(r=-0.661;p<0.05,r=-0.743;p<0.01),これとは逆に下肢の運動においてはいれずれも有意な正の相関関係が認めれられた(r=0.680;p<0.05,r:0.782;p<0.01).(3)上肢の運動におけるMean forceと下肢の運動におけるMean forceとの間には,コンセントリックのみの条件では有意な正の相関関係が認められたが(r=0.607;p<0.05),カウンタームーブメント条件とリバウンド条件では有意な相関関係は認められなかった(r=-0.092,-0.278;ns).これらの結果は,上肢と下肢とでは,SSC運動における予備伸張の効果が大きく異なること,力発揮に対する最適なstiffness特性が異なること,および同一個人の上肢および下肢のSSC運動における力発揮特性には大きな個人差があることなどを示唆するものである.

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