Abstract

要旨近年とくに外傷領域において,血液型判明前に緊急輸血が実施されることが増えている。しかし,本邦ではRh陰性の血液が不足しており,緊急輸血ではやむを得ずRh陽性の血液が用いられる。緊急輸血実施後に患者の血液型がRh陰性であることが判明する事例は一定の確率で起こると予測されるが,本邦ではほとんど報告されていない。症例は20歳代の女性,多部位刺創による出血性ショックのために,当院救命救急センターへ搬送された。主な損傷部位は,右顔面動脈損傷,右内頸静脈損傷,両肺損傷であった。血液型判明前にO型Rh陽性の濃厚赤血球,AB型Rh陽性の新鮮凍結血漿を急速投与したが,ショックから離脱できず,可及的速やかに止血術を実施した。術中に患者の血液型がO型Rh陰性であることが判明したが,出血が持続しており,十分な同型輸血を確保することは不可能と判断し,引き続きRh陽性の血液を投与した。手術終了までに,濃厚赤血球計70単位,新鮮凍結血漿計80単位,血小板計80単位を要した。術後は定期的な血液検査を行ったが,溶血を含む有害事象を呈することはなかった。第53病日に抗D抗体が陽性となった。Rh不適合輸血の安全性を検証した報告はいくつか見られるが,いずれも有害事象を認めていない。危機的大量出血に対してRh不適合輸血を実施することは許容される。不適合輸血実施後は,適切なフォローアップを行うべきである。

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