症状変化を繰り返したparoxysmal sympathetic hyperactivityの1例(A case of paroxysmal sympathetic hyperactivity with fluctuation of symptoms)

Abstract

要旨paroxysmal sympathetic hyperactivity（PSH）は重症頭部外傷など重症頭蓋内傷病後に発作的な交感神経過緊張症状を起こす病態である。発作の症候や強度の変化を繰り返す経過は報告されていない。症例は30代男性で重症頭部外傷に対する低体温療法終了後に高熱，頻脈，頻呼吸，大量発汗など発作的な交感神経過緊張症状と筋緊張亢進を認め，感染症を疑い治療したが，炎症反応陰性化後も含め10日にわたり症状が持続した。その後も第28病日からの5日間と第43病日からの3日間に典型的なPSH症状期を計3回繰り返し，間欠期は大量発汗と筋緊張のみが持続するという特異な経過をたどった。感染など鑑別すべき病態が否定され診断基準に合致したためPSHと診断した。PSHでは発作症状期と間欠期を繰り返し，間欠期には発作症状の一部のみが持続する経過がありうる。大量発汗など交感神経過緊張症状の一部が続く場合には他の病態を否定したのちにPSHを積極的に疑い診断，治療を試みるべきである。