Abstract
大阪府立老人総合センターに通う老人41名 (男12名, 女29名, 平均年齢68.8歳) を対象に, 知能テスト, 脳波検査とともに, 機械的刺激による体性感覚誘発電位 (SER) および随伴陰性変動 (CNV) を記録し, 以下の結果を得た.1. 通所老人41名の長谷川式簡易知的機能評価スケール (HDRS) の平均値は30.9点 (範囲: 23~32.5点) で, コース立方体組合せテスト (KBDT) の平均IQは87.3 (範囲: 45~124) であった. 年齢別には, HDRS, KBDTともに, 60歳代老人が70歳代老人より高得点を示していた.2. 通所老人41名の脳波結果は, 正常例が26名 (63.4%), 境界例8名 (19.5%), 異常例7名 (17.1%)であった. また, SERは, 正常所見28名 (68.3%), 頂点潜時延長型11名 (26.8%) であり, 部分頂点欠如型は2名 (4.9%) にみられた. 一方, CNVでは, 非定型CNVが7名 (17.1%) にみられ, 命令刺激後陰性変動 (PINV) が7名 (17.1%) に出現した.3. 臨床精神神経学的検索, 知能テスト, 脳波所見を総合的に検討することにより正常老人29名を選びだし, 老人のSERとCNVの標準化を試みた. その結果, SERのP2, N2, P3の頂点潜時は加齢による影響をほとんどうけないが, N3頂点潜時は加齢により変化し, 正常成人 (平均31.5歳) の平均が62.5msecであるのに対し, 60歳代老人では69.0msec, 70歳代老人では70.9msecと老人群で著明な潜時延長を認めた. このことより, SERのN3頂点潜時は, 脳機能を判定する有用な老化指標になると考えられた. 一方, CNVの形態や振幅については, 正常老人と正常成人の間でほとんど差異を認めなかった. ただ, PINVは, 臨床精神神経学的に軽度の異常が認められた老人に多く出現する傾向がみられた. 痴呆老人に出現のみられるPINVは, 痴呆化傾向をとらえる一指標になる可能性があると考えられた.
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