Abstract

イネにおいて不完全米の発生は水ストレスを与える時期によって異なる. 玄米の生長は登熟期間の乾物供給量に規定されることから, 不完全米発生の差異は登熟期間の乾物生産量に左右されると考えられた. そこでこのことを実験的に検討するために水田土壌を詰めた1/5000aポットに水稲 (品種コシヒカリ) を湛水栽培し, 異なる発育段階 (出穂前15日目, 出穂後2日目と12日目) に給水量を前日の蒸発散量の60%に制限する処理を1週間行った. その結果, 登熟期間の乾物生産量は出穂前の水ストレスによって殆ど変わらなかったものの, 出穂後の水ストレスによって大きく低下した. 出穂前の水ストレス条件下では乾物生産量にかかわらず, 個体当り籾数の低下と籾殻の縮小によって個体当り穂重が低下した. これに対して, 出穂後の水ストレス条件下では乾物生産量の低下に伴い個体当り穂重が低下した. これと同時に一稔実籾重が低下し, 比重0.84から1.06までの籾が増加した. 比重0.84から1.06までの籾は, デンプンの蓄積が不十分な不完全米を内包する. 以上より, 水ストレスは幼穂発育初期では個体当り籾数の低下と籾殻の縮小を介して, 出穂後では玄米のデンプン蓄積の不足を介して, 精籾生産を抑制することがわかった.

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