Abstract
Brassica属の野生種の一つであるBrassica oxyrrhina Coss.(2n=18)を種子親,ダイコン(Raphanus sativus L. 2n=18)を花粉親にした交雑後代より作出した複二倍体(2n=36)にダイコンを連続戻し交配した。その結果,B2世代においてB.oxyrrhina細胞質を持つ2n=18の個体を作出した。核置換が進行しても花粉稔性の回復はあまり見られず,B.oxyrrhina細胞質はダイコンの花粉の授精髭カを抑制させる効果があることが分かった。また,核置換の進行とともに種子稔性も上昇したが,その程度は良好ではなかった。B.oxyrrhina細胞質を持つダイコン9系統とそれぞれの反復親である9栽培種との間で正逆交雑を行い,得た両F1植物の種子稔性,花粉稔性,生育,形態などを調査した。その結果,B.oxyrrhina細胞質を持つダイコンにおけるクロロフィル欠乏はまったく見られなかった。根長,根径,根重,葉重について見ると,赤丸二十日,聖護院,四十日,宮重において,B.oxyrrhina細胞質がダイコンの生育に影響を及ぼしていたが,Raddike ostergruss,練馬においては影響は見られなかった。したがって,B.oxyrrhina細胞質と不調和を起こさない核遺伝子が存在する可能性があり,このような核遺伝子を導入することにより生育阻害の問題は解消できると考えられる。B.oxyrrhina細胞質を雄性不稔細胞質として利用することに関しては,50%以下の花粉稔性では種子ができないこと,また,充分な花粉稔性を持ったものでも授精髭カを持っていない個体もあり,実用的に利用できる可能性もあると考えられる。
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