Abstract

非生物的環境ストレスに適応した作物の育種において,根の改良が重要視されている.そのため,環境ストレス耐性を持つ根の遺伝資源提案が求められる.イネの野生種であるOryza glumaepatulaはアマゾン川の水分変動が激しい過酷な環境に自生する.我々はこのO. glumaepatulaは栽培種には見られないような特徴を持つと考え,種子根における7つの形質 (側根の数,根毛長,皮層と中心柱および通気組織と皮層の面積比,外皮のカスパリー線およびスベリンラメラの形成,厚壁組織のリグニンの蓄積) について,栽培イネ台中65号 (T65) と比較しながら調査を実施した.O. glumaepatula IRGC105668系統はT65と比較して,側根数は同等であったものの,根毛はより長いものとなっていた.IRGC105668の皮層と中心柱および通気組織と皮層の面積比はT65よりも小さいものとなった.T65は外皮のスベリンラメラおよびカスパリー線をほとんど形成しないのに対し,IRGC105668はそれらを多数形成した.IRGC105668の厚壁組織のリグニンの蓄積量はT65と同等であった.以上の調査より,IRGC105668の7つの形質のうち5つの形質 (根毛長,皮層と中心柱および通気組織と皮層の面積比,外皮のカスパリー線およびスベリンラメラの形成) は,T65と比較して量的な違いを持つことを見出した.特に,このうち3つの形質 (根毛長および外皮のカスパリー線とスベリンラメラの形成) はT65と比較してより顕著な違いがみられたことから,今後育種への利用が期待できる.

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