Abstract

中国江蘇省で育成された多収性(日本型)水稲もち系統9004(L9)と対照品種として出穂期がほぼ等しいうるち品種コガネマサリ(KM)を供試し, 穂肥の窒素施用量の多少とリン酸施用の有無を組み合わせて栽培し, L9の多収要因の解析を行った. 両品種とも精玄米収量は, 主に1穂籾数の差に基づく面積当たり籾数の差によってL9では675~820gm-2, KMでは568~641gm-2で, 多窒素・リン酸施用区で最も高くなった. 収量はもみわら比と, またもみわら比はシンク容量(m2当たり籾数×精籾1粒重)と高い正の相関関係を示した. 穂肥のリン酸施用により, 1穂籾数の増大とそれに伴う登熟歩合の低下抑制により増収したが, その程度はKMよりL9で, また少窒素区より多窒素区で顕著であった. リン酸施用は, 窒素単独施用区よりもさらに葉色値を向上させ, 純同化率を高め, 登熟期間の乾物生産量を向上した. 一方, 両品種の各処埋区のm2当りの平均収量はL9では735g, KMでは588gで約150gの差がみられたが, これは主に千粒重の差異(L9:27.7g, KM:23.8g)によってもたらされた. 両品種の籾殻重と登熟期間には差異は認められなかったが, L9では登熟期間前半の籾の乾物蓄積速度がKMに比べて速く, このことが両品種の千粒重の差異の主要因と考えられた. これにはL9の籾の水分含有率が高く推移し, シンク活性が高かったこと, 穂揃期の稈+葉鞘の貯蔵炭水化物が多く, さらに稈から穂にかけての維管束系の発達がKMに比べて優っていたことが関係したと推定された.

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