Abstract

要旨風船による気管異物は頻度は低いが,乳幼児における食物以外の窒息死の原因となり得る。我々は,風船による致死性窒息に対し体外式膜型人工肺(ECMO)を導入することで救命し得た症例を経験した。症例は生来健康な1歳の女児。子供同士で遊んでいて風船を飲み込み,呼吸窮迫となったため当救命救急センターに救急搬送された。来院時,意識レベルJCS 300,あえぎ呼吸でバッグバルブマスクによる換気はできず,SpO2測定は不能だった。直ちに挿管を施行し,SpO2 100%となり自発運動を認めた。経口挿管チューブから細径軟性気管支鏡を施行するも,気道分泌物が多く異物は同定できなかった。挿管チューブの位置修正後に換気が再び困難となり,酸素化も保てなかったため緊急でECMOを導入した。3D構築したCT画像で気管から右主気管支にかけて嵌頓する異物を認めた。ECMOの導入により呼吸・循環の安定化を図ったのち,一旦気管チューブを抜管し,軟性気管支鏡下に約4cm,幅約0.8cmのゴム風船を除去した。無気肺と陰圧性肺水腫のため4日間のECMO管理を要した。第18病日に人工呼吸器を離脱,第39病日に自宅退院となった。気管異物による小児の致死性窒息に対してECMOを導入した報告は少ない。本症例のように重篤な呼吸不全を伴う乳幼児の気管異物では,異物除去の際にECMOによる補助が有用であると考えられた。

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