Abstract

要旨 我々は,当初は外傷の可能性も考慮されたが,結果的にALアミロイドーシスと診断された体幹部多発出血の1例を経験し,適切な治療にて救命し得たので報告する。症例は高血圧の既往がある74歳の女性で,自宅で動けなくなっているところを発見・救急要請され,前医に搬送された。前医で行った腹部CT検査で後腹膜血腫を認め,骨盤骨折の疑いでドクターヘリが要請された。フライトドクターが現場でFAST(focused assessment with sonography for trauma)陽性と判断した。病院到着後,腹腔内液体貯留が増加,急速輸液に反応しないショック状態に対して,緊急開腹手術を行った。術中所見では,腫大脾の破裂がみられ,脾臓摘出術を行った。また,続いて行った血管造影検査にて,右腰動脈からのextravasationが確認され,コイル塞栓術を行って止血を完了した。摘出した脾臓組織の病理検査を行い,ALアミロイドーシスと診断された。その後,患者は退院し,外来通院中である。アミロイドーシスにおいて腫大脾が破裂・出血する症例はあるが,後腹膜出血を同時に併発した報告は検索する限り皆無であった。本症例のように外傷機転のない体幹多発出血の原因には,アミロイドーシスを鑑別に挙げるべきである。

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