Abstract

要旨粘液水腫性昏睡は緊急度が高い救急内分泌疾患である。低体温症の合併頻度が高いにもかかわらず,復温方法には一定の見解が得られておらず,また,ホルモン治療には議論の余地が残されている。60歳代の女性が,寒い冬の夜に低体温症を来し,当センターへ救急搬送となった。来院時は,心拍数51/分,血圧125/80mmHg,呼吸数15/分,Glasgow coma scale E3V4M5,体温30.4℃であった。血液検査で遊離トリヨードサイロニン(FT3)と遊離サイロキシン(FT4)が低下しCO2ナルコーシスを伴っていたため,甲状腺機能低下症および粘液水腫性昏睡と診断した。中心静脈留置型経皮的体温調節装置システムを用いて復温したところショックへと状態が悪化し,人工呼吸管理や心血管作動薬の調節を必要とした。搬入5時間後,および7時間半後にレボチロキシンナトリウム(L–T4)を2度にわたり経管投与したが効果に乏しく,搬入19時間後にリオチロニンナトリウム(L–T3)を投与したところ循環動態が改善した。第10病日まで心血管作動薬の継続が必要であったが,第26病日に人工呼吸器から離脱できた。ホルモンの内服調節などを行い,第54病日に自宅退院した。迅速にL–T3が利用でき,先行投与または復温と同時投与できれば,ショックを避け得る,もしくは軽減でき得る可能性が,本症例経験より示唆された。

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