Abstract

要旨腹部刺創による出血性ショック症例に対して,大動脈閉塞バルーンカテーテル(intra–aortic balloon occlusion; IABO),Damage Control Surgery(以下DCS)を施行後,下腿コンパートメント症候群(Lower Leg Compartment Syndrome; LLCS)を呈した1例を経験したので報告する。症例は43歳男性で,腹部を刺し倒れているところを発見され,当院に救急搬送された。来院時ショック状態を呈し,腹部超音波検査にてMorison窩に液体貯留を認め,外表上,腹部2ヶ所の刺創より腸管脱出を認めた。初期輸液に反応せず,気管挿管及び,右大腿動脈からIABOを挿入し,濃厚赤血球の急速輸血を開始した。来院から約35分で緊急開腹術を施行した。開腹すると,複数箇所の腸管損傷を認め,刺入創先端は後腹膜に達していた。可及的な腸管切除後,後腹膜部位からの出血のコントロールが困難となり,deadly triadを認めたため,ガーゼパッキングを実施して速やかに閉腹した。初回術後,Intra–abdominal pressure(以下IAP)は最高値40mmHgを示したため,abdominal compartment syndrome(以下ACS)と判断し,術後約24時間でsecond look operationを施行し,腸管吻合を実施した後,閉腹した。その後IAPは16mmHgまで速やかに改善した。しかし初回緊急手術から約48時間後,右下腿の色調変化と,下腿コンパートメント圧の上昇(最大80mmHg)を認めた。血清クレアチニンキナーゼ(CK)は62100IU/Lまで上昇した。右LLCSと診断し,減張切開を行い,速やかにコンパートメント圧は低下した。しかし一部筋壊死を認めたため,術後13日目に,壊死筋部のデブリードマンを要した。術後経過は良好で,第53病日に独歩退院した。本症例におけるLLCSの成因として,IABOやDCSに伴う下腿虚血・還流障害が一因と考えられた。

Full Text
Published version (Free)

Talk to us

Join us for a 30 min session where you can share your feedback and ask us any queries you have

Schedule a call