Abstract

上級レベルの日本語会話授業において自らの意見を支えるデータの準備を宿題にすると、グラフや調査方法などに問題のあるものを持参する学習者が多い。しかし、そのようなデータでは意見の論理性は高められない。この問題を解決するためには統計リテラシーが有用であると考えられた。そこで本稿では統計リテラシーの育成を目指した上級会話授業での実践を報告する。 授業後のアンケート結果から、データやグラフに対する見方や考え方の変化を8割を超える学習者が実感したことが明らかとなった。学習者が実感した変化とは、具体的には騙されやすさのほか、問題の存在やその影響力についての気づき、データやグラフを鵜呑みにしてきた過去の態度に対する反省、授業活動前よりもデータやグラフを疑ったり吟味したりする姿勢が形成されたことなどである。また統計リテラシーにおける批判的思考についても、学習者が少なからず向上を実感していたことなどが明らかとなった。 本稿で報告した実践は実験的試みという側面が強いが、日本語教育分野において統計リテラシーの育成を目指した実践報告は管見の限りない。論理的に話せることが「上級レベルの日本語会話能力」に必須であるなか、論理的思考や批判的思考の育成と関連が強く、さらに情報化社会を生きる一般市民としても必要な能力だと言える統計リテラシーを日本語の会話授業で養うことができれば一挙両得である。そのような授業を提起し可能性を示唆した本稿の実践報告は日本語教育分野に貢献しうるものだと考えられる。

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