Abstract

11世紀にスペインに伝わった製紙技術は,ヨーロッパ全域に広がった。その製法は,基本的にリネンのぼろを十分に叩解し,手漉きした紙をフェルトに挟んでプレス後ぶら下げて風乾する。次いでゼラチンを含浸し,風乾後磨き上げる。その技術開発の過程で,動力水車の利用,流れ作業による工場生産とその管理,製品規格サイズの普及等,次の産業革命の準備がなされた。紙にサイズ性を与えることは各地で普遍的に求められた。ヨーロッパでは,後工程としてゼラチン含浸を行った。最初は羊皮紙の代わりとしてペン書きに耐えるように,次いで15世紀から印刷が普及するにつれて,それに必要なだけの低サイズに改良されていった。19世紀に入って抄紙機が開発されると,サイズ剤の内添が試みられ,ゼラチンに代わってロジンの内添が普及する。さらに,印刷方式の合理化,タブサイジングの普及等により,ゼラチンサイズは終焉した。次回は,製紙産業の発展とそれを受けた社会の経済・文化との関連を調べる。

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