繰り返す出血症状にも関わらず高齢で診断された血液凝固第XIII因子欠損症の1例(Undiagnosed coagulation factor XIII deficiency: an elderly case with repeated bleeding)

Abstract

要旨血液凝固第XIII因子（Factor XIII: F XIII）欠損症は易出血性を呈する稀な疾患であるが，一般的なスクリーニング検査では正常を示すことが多い。F XIII活性測定でのみ診断可能なため，見落とされやすい。今回，筋肉内血腫の突然発症を契機に診断したF XIII欠損症の1例を報告する。68歳の女性。外傷などの誘因はなく左前胸部の腫脹・疼痛が突然出現した。CT検査で左大胸筋内血腫を認め，責任血管の塞栓術を施行した。患者は過去に，大量出血を繰り返す既往があったが，止血に関わるスクリーニング項目は正常で日常的な出血症状も認めないため，本症を診断されることなく未治療であった。今回我々は，過去の病歴から出血傾向を認識し精査することでF XIII欠損症を診断した。F XIII補充療法を開始し，以後再出血なく経過した。F XIII欠損症は致死的出血を来し得る疾患である。しかし出血傾向に気づけば，診断すること自体は難しくない。止血や出血予防にF XIII補充が著効するため，早期診断が望まれる。