Abstract

本稿の目的は,Luhmannのシステム論の視座から教育システムと道徳との関係を分析することで,道徳教育特有の困難性がいかに形成されるかを考察することにある。 Luhmannのシステム論の視点からすれば,道徳と教育システムの両方との関わりを通して成立しているのが道徳教育である。したがって道徳教育をより全面的に捉えるには,教育システムだけでなく,システムを形成できないとされた道徳も視野に収めた上で,両者の相互関係を検討する必要がある。しかし,道徳教育に関する従来の考察は議論の焦点をもっぱら教育システムの側に絞ってきたため,道徳ないし両者の相互関係にあまり注目してこなかった。そこで,なぜほかでもなく道徳教育が,「道徳とはそもそも何なのか」や「道徳は教えられるか」に代表されるような,方法論の水準を超えた根源的な定義づけや成立可能性を問い直そうとする疑問や批判にさらされてきたかが十分に答えられないままにとどまっている。本稿では,Luhmannの教育システム論と道徳論を手がかりに,こうした道徳教育特有の困難性が形成されるに至るその理路の析出を試みる。 Luhmannのシステム論に依拠して分析した結果,道徳教育の知識編成と習得過程のどちらにおいても,教育システム固有の作動様式の恣意性を観察可能にするような道徳・教育間の拮抗関係が解消され難く随伴しているという,道徳教育の特殊な構造が浮かび上がった。このことによって,道徳教育特有の困難性だけでなく,その存立機制そのものをもより全面的に把握するための一つの有効な視座が提供された。最後に,本稿で得られた知見を踏まえて今後の道徳教育論の方向性を指摘し,残された課題を示した。

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