Abstract
最近わが国でも尿失禁が重要な疾患として認識されつつある. 尿失禁の治療は理学療法や手術療法もあるが, その中心は薬物療法である. この薬物療法の一つにエストロゲンがあげられているが, その効果については必ずしも評価が定まっていない. 基礎実験のデータでも, 臨床研究でもエストロゲンが効果ありとする説と否定的な説が相半ばしている. しかし更年期以降の尿失禁の患者に一定期間エストロゲンを投与すると尿道閉鎖圧, および腹圧の尿道へのtransmissionが改善し, 全例ではないとしても尿失禁が治癒するか改善する症例があることは確かである. しかし無効な例も少なからず認められることから, エストロゲンを更年期以降の尿失禁治療のファーストチョイスの薬剤には使用しにくい. 他にエストロゲン投与の適応があったり, 他の尿失禁治療の補助としての使用が最も妥当なものであろう. ただしエストロゲンには血栓や発癌性などの問題があり, 使用にあたっては十分な注意が必要である.
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