Abstract

症例は生来著患のない59歳男性.検診で高血圧症を指摘され近医を受診した.精査のCT検査でCrawford II型相当の胸腹部大動脈瘤が指摘され,精査加療目的に当科紹介となった.手術侵襲を低減させる目的で,一期目に全弓部置換術,二期目に胸部ステントグラフト内挿術,三期目にIII型相当の胸腹部置換術を行う計画的分割手術を施行した.三期目の胸腹部置換術後に対麻痺を認め種々の支持療法にても改善を得られず,下肢麻痺および膀胱直腸障害が残存した.リハビリ施行ののち術後67日目に回復期病院に転院となった.転院後褥瘡形成や反復する尿路感染を認め抗生剤加療が開始されていたが改善に乏しく,またCT上両側大腿骨周囲に血腫形成と異所性骨化を認め,集学的治療が必要と判断され転院後約4カ月で当院へ再入院となった.臨床経過および画像所見から術後対麻痺に合併したNeurogenic heterotopic ossificationと診断した.褥瘡および尿路感染に対する抗生剤加療を継続すると同時に,強度に留意しながらリハビリを継続することで異所性骨化の増悪を認めず経過した.入院後44日目に皮弁を施行し,79日目に再転院となった.Neurogenic heterotopic ossification自体の病態生理は不明な点が多く治療法も定まったものはないが,術後対麻痺を合併した症例においてはNeurogenic heterotopic ossificationが生じるリスクにより術後のリハビリ自体が制限され,手術侵襲からの回復やADL維持を困難にさせる可能性が考えられた.リスク因子に対する適切な予防マネージメントを講じ,早期発見に務めることが重要と考えられた.

Full Text
Published version (Free)

Talk to us

Join us for a 30 min session where you can share your feedback and ask us any queries you have

Schedule a call