Abstract
受振器を調査範囲内で格子状に配置し,利用可能な受振器のペア数と受振方位を十分に確保する3次元微動探査の適用が進んでいる。しかし,市街地や住宅地では受振器を設置する場所が制限されるため,格子状に密に受振器を配置することは難しい。そこで,アクセス可能な道路のみを利用し,直線,L字,T字,十字状に受振器を密に配置した小アレイと,格子状に受振器を配置した大アレイを組み合わせた不規則配置の3次元微動アレイ探査の適用を試みた。現場測定を実施した場所は,東日本大震災の際に液状化被害を受けた茨城県神栖市深芝地区の520m×640mの範囲である。小アレイの受振器間隔は5m,大アレイの受振器間隔は40mを基本とし,1展開につき45~50台の受振器を利用して測定した。両アレイによって得られた合計57展開の記録を用い,CMP-SPAC法により3次元S波速度構造を推定した。単独のアレイと両者を組み合わせたアレイの記録から求められたそれぞれの分散曲線を比較したところ,小アレイのみ,あるいは大アレイのみでは不足する解析可能な周波数範囲を,両者を組み合わせることで相互補完できていることがわかった。これより,広い周波数帯域で表面波の位相速度を決定でき,浅部から深部までのS波速度構造を推定することができることがわかった。得られた結果は,既存調査による道路被害分布や配水管被害点,噴砂の発生箇所,採掘跡地の分布と非常によく対応しており,その有用性が示された。今後,市街地や住宅地のように受振器を設置する場所が制限される場合でも,不規則配置での微動探査を行うことで,比較的に簡便に広域の地盤のS波速度構造を推定できると考えられる。また,得られた結果は,たとえば液状化評価に用いる地盤モデル作成に利用でき,防災ハザードマップの作成に寄与できると思われる。
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