Abstract

化学反応に及ぼす溶媒効果は,溶媒の物理的性質である誘電率や溶解パラメータで説明されているが,非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒の溶媒効果を同時に説明できない場合が多く生じる。そのため,経験的溶媒パラメータが多数提唱されている。そのなかでGutmann et al. のdonor number (DN)とacceptor number (AN) は溶媒の電子授受性の尺度と考えられている。したがって,溶媒のHOMOおよびLUMOのエネルギー値との間に相関があると見なされ,8種類の溶媒 (DMSO, DMF, AN, Ac, EtOH, MeOH, FA, H2O ) の値がすでに計算されてANとの相関が調べられている。今回,さらにそれらの溶媒を加えて31種類の溶媒についてab initio法によりEHOMOおよびELUMOの値を求めて検討した。その結果,プロトン性溶媒で, ELUMO値が大きくなり,電子受容能が低下しAN 値の間で逆の相関が成立しているのが認められ,予想と反対の結果となった。そこで,31P NMR化学シフトに基づく経験的溶媒パラメータAN値の基準標準物質であるtriethylphosphine oxide(Et3PO)と溶媒(S)の1:1溶媒和構造を半経験的方法とab initio 法で計算を行い,Et3PO のPおよびOの電子電荷分布,P-O距離,Et3POとSの間の水素結合距離を求めた。AN値は溶液(溶媒(S))中で得られた値であり,気相中の計算結果との比較は興味が持たれる。溶媒は非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒に大別されるが,さらに極性の大小により分けられる。AN値が10以下の溶媒は極性の小さい非プロトン性溶媒,10から20までの間に極性の大きい非プロトン性溶媒,20以上に極性を持つプロトン性溶媒が位置している。したがって,各グループからよく使用される溶媒を20種類選択した。その結果,極性の小さい非プロトン性溶媒と水以外のプロトン性溶媒は,ほぼ1:1溶媒和錯体で相関関係(R=0.79-0.88)がよく,溶液中においても気相計算から得られた構造に基づくことが示唆された。一方,10から20までの間の非プロトン性極性溶媒と54.8の水がAN値との相関関係から大きくずれた。10から20までの非プロトン性極性溶媒(DMF,DMA, DMSO 等)は双極子モーメントが大きく,溶媒の液体構造が発達した構造 (aggregation) を形成している。また,水は水素結合形成による液体構造(cluster)を形成している。したがって,これらの溶媒中では,aggregationまたはcluster 化した複数の溶媒分子が溶媒和に関与しており,このことがずれの原因であると見なされる。

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