Abstract

本研究の目的は,スポーツボイスと呼ばれるボイストレーニング・プログラム(SVP)に参加することによって,高齢男性の心理的健康と配偶者とのコミュニケーションが促進されるかを検討することである。SVPに参加した高齢男性と配偶者を実験群として,開始前(T1),終了直後(T2),その3ヶ月後(T3)の3波のダイアドパネル調査を実施するとともに,類似した活動をする統制群と比較することで,準実験での検討を行った。共分散分析の結果,T2では,実験群の高齢男性は統制群に比べて,自尊心と配偶者からの反映的自己評価が高く,心理的健康が良好になった。さらに,実験群の配偶者は統制群に比べて,夫のコミュニケーション態度の推測が良好になった。また,パス解析によって,このSVPの効果が,集団アイデンティティ(ID)を高め,それが自尊心を仲介して,心理的健康を規定するプロセスが示された。T3では,全体的には,SVPの効果は消失した。ただし,T3において,実験群では,集団アイデンティティが高いほど,参加者および配偶者の心理的健康が高く,コミュニケーション態度も良好であった。これらの結果から,SVPは集団アイデンティティを高める形で,高齢男性の心理的健康を短期的に高める効果を持つことが明らかにされた。

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