Abstract

2価金属イオンと大きな1価陰イオンとのイオン対の抽出平衡を比較検討する目的で,ストロンチウム(II)をテトラフェニルホウ酸イオン(TPB-)で溶媒抽出した.TPBナトリウム自身のニトロベンゼンへの抽出は,その濃度にほとんど依存せず,これはこの塩が水相でも有機相でも完全に解離していることによって説明されたが,トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)を含むヘキサンへの抽出は複雑であり解析は困難であった(Fig.1).一方,この試薬のみを含む水相中のトレーサー量のストロンチウム(II)のニトロベンゼンへの抽出は,あまり抽出剤濃度に依存せず,これも有機相中でほぼ完全解離していることによって説明された.またTOPO-ヘキサンへの抽出は,抽出剤濃度の2乗に比例しこの金属イオンが水相中では完全解離,有機相中では完全会合していることで説明された(Fig.2).一方,定イオン強度の過塩素酸ナトリウム水溶液中のストロンチウム(II)のニトロベンゼンへの抽出は,抽出剤濃度の2乗に比例するがTOPO-ヘキサンへの抽出の依存性はこれより小さい(Fig.3).また抽出剤濃度を一定に保ち水相中の過塩素酸塩濃度を増大させた場合,ニトロベンゼンへの抽出は急激に減少するが,TOPO-ヘキサンへの抽出はあまり影響をうけない(Fig.4).更にTPB-とナトリウム(I)及びストロンチウム(II)のイオン対のTOPO-ヘキサンへの抽出は,TOPO濃度の2乗及び4乗に依存する(Fig.5).これらを数式的に処理することによって系内の平衡を合理的に理解することができた.またこれらの結果からニトロベンゼンへのイオン対抽出法によりストロンチウム(II)とセシウム(I)あるいはカリウム(I)を分離するためには,水相中にナトリウム塩を共存させるのが有効であることが結論された.

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