大動脈瘤食道穿破に対してSBチューブが有効であった1例(Aortoesophageal fistula due to rupture of descending aortic aneurysm successfully treated by Sengstaken–Blakemore tube)

Abstract

要旨 下行大動脈瘤食道穿破は治療が困難であり，致死率が高い病態である。今回，下行大動脈瘤食道穿破で大量吐血し，ショック状態で搬送され，SBチューブを用い，出血を制御し，その後ステントグラフト内挿術を行い救命できた症例を経験したので報告する。症例は60歳頃に腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けた80歳男性，散歩中に大量の吐血がみられたため救急搬送となった。来院時，血圧54/36mmHg，脈拍140/分とショック状態であり，吐血による出血性ショックと判断し，経口気管挿管と急速輸液を行った。循環が安定したため，造影CT検査を撮像したところ，下行大動脈に大動脈瘤および瘤からの造影剤の漏出，胸部中部食道への穿破を認めた。CT検査帰室後，再び大量吐血がみられ，急速輸液や輸血をしても血圧を維持できないため，SBチューブを挿入した。バルーン内圧を徐々に上昇させ，110mmHgまで内圧を上げたところで吐血がみられなくなった。急速輸液や輸血を継続しつつ，収縮期血圧90mmHg台で安定したため，来院後3時間程度で手術室に入室し，胸部大動脈ステント内挿術を施行してICU入院となった。その後も適宜輸血を要したが，全身状態は安定した。第12病日に食道抜去術を施行し，第20病日に一般病棟に転棟となった。大量吐血を伴った大動脈瘤食道穿破に対して，SBチューブを用いることで出血を制御し，救命し得たと考えられる。