Abstract

コムギの雪害はそのほとんどが雪腐病の発生に起因しており,その被害程度には積雪下における植物体の生理的活性程度が大きく影響する。耐雪性品種の育種に資するため根雪前及び積雪下での生理・生態的形質の変化と雪腐病被害との関係を秋播コムギ45品種を用いて検討した.1992-1993年には冠部比率,乾物率,LT50による耐凍度を根雪前に調査したほか特に代表的な1O品種については茎葉重,乾物率,耐凍度,暗黒下再生量を根雪前と積雪下70日目に測定し,比較した。さらに1993-1994年には全品種の耐凍度を根雪前と積雪下95日目に測定するとともに雪腐病被害程度を調査した。茎葉重や乾物率では根雪前と積雪下70日目に有意な相関があったが耐凍度や暗黒化再生量では有意でなかった。また乾物率,耐凍度,暗黒化再生量の相互間に根雪前には有意な相関は認められなかったが,積雪下では有意な正の相関が認められた。これらの原因としてP.I.173438,Niederndorferberg,Haunsberg,農林62号などの耐雪型品種が根雪前では乾物率が高いにもかかわらず耐凍度が劣り積雪下では耐凍度や暗黒化再生量の減少が少ないためで,耐凍度や暗黒化再生量は積雪下における植物体の生理的活性の指標として有用であった。雷腐病被害程度と耐凍度及び暗黒化再生量の関係も同様に根雪前には有意でなかったが積雪下で有意となった。一方乾物率は積雪下で10品種一様に減少した結果,雪腐病被害程度との相関が根雪前(r=-0.618)においても積雪下70日目(r=-0.879***)においても調査形質中最も高かった。耐凍型品種が高い乾物率と優れた耐凍度を示し冠部比率が50%近くその叢生はロゼット型を示したのに対し,耐雪型品種は高い乾物率でありながら耐凍度は相対的に低く冠部比率が35%前後でその叢生は直立していた。

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