Abstract

過去におけるモンスーン変動のパターンを復元するための代表的な試料として,中国のレス古土壌堆積物と鍾乳石をあげることができる.だが,前者が主としてモンスーンと氷期・間氷期サイクルの密接な結びつきを示唆するのに対し,後者においては太陽放射の直接の影響の方が卓越するなど,両者の間には本質的に解決されない矛盾が存在していた.著者らは,琵琶湖の堆積物コアの化石花粉データを用いて,季節ごとの気候を過去45万年にわたって定量的に復元することで,この矛盾を統合的に説明することを試みた.その結果,シベリアと太平洋の気団の温度はいずれも氷期・間氷期サイクルに応じて変動するが,海陸の温度傾度においてはそのような変動が相殺され,むしろ太陽放射の直接の影響の方が卓越することがわかった.また海陸の温度傾度はモンスーンの直接の駆動力であるため,夏モンスーンの強度も太陽放射の変動周期に同調して(すなわち,主として23,000年の歳差運動周期で)変動していた.ただし,太陽放射の振幅が十分に大きくない時代においては,モンスーンは氷期・間氷期サイクルの方に連動する傾向が見られた.本稿では,これらの事実を総合的に説明することのできる,きわめて単純なモデルについて解説する.またモンスーンが海洋の表面温度の分布に及ぼすかもしれない長期的な影響,ならびにレス古土壌堆積物が内包している,モンスーンの記録計としての問題点についても言及する.

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