Abstract

ホルスタイン種の雌育成牛(238 日齡,体重247kg)における左橈尺骨骨幹の非開放性斜骨折と診断した症例について,貫通固定ピンとフルリムキャストを用いた貫通固定ピンキャスト(TPC)法による治療を行った.術中は塩酸キシラジンの静脈内投与(0.2mg/kg)で仰臥位保定後,塩酸メデトミジンの定量持続点滴(20μg/kg/hr)にて鎮静を維持し,2% リドカイン10mℓによる腕神経叢ブロックで疼痛管理した.患肢の牽引と骨把持鉗子により骨折端を合わせて固定し,整形外科用パワードリルを用いて直径4.0mm の貫通固定ピンを,骨折端を挟む遠位および近位側橈骨骨幹にピンを各2 本,近位および遠位骨の骨折端および骨折面を貫通するようにピン3 本をそれぞれ貫通させた.さらにその上からフルリムキャストを巻き,キャスティングテープ表面から露出したピンは約4cm で切断し,即時重合レジンで各ピンの切断部を被覆・結合した.手術時間は80 分であった.症例は覚醒後すぐに起立歩行可能であり同日中に退院,単房で個別飼育とし,術後1 週間の抗生物質製剤投与を行った.術後48日目にX線所見にて明瞭な仮骨形成を認めたため,手根関節以下の遠位側のキャスティングテープ部分を切断・除去した.術後81 日目にキシラジン鎮静下でTPC 全てを除去し治癒とした.治療期間中および治療後の起立歩行は問題なく,その後の発育も順調であった.牛の橈骨骨折では内固定で高い治癒率が報告されているが治療にかかるコスト,手術時間および難易度,術後合併症のリスクにおいてTPC は内固定よりも生産動物である本症例にメリットを与えた.牛の骨折治療では体重が予後に影響を与え,さらにTPC では使用する貫通固定ピンの太さ・本数・配置ならびにフレームであるキャストの長さが,骨折端の安定性や固定の強度に影響を与える.体重が重い個体の橈骨骨折をTPC にて治療した報告は限られており,本症例は今後の治療の際の良いモデルとなった.

Full Text
Paper version not known

Talk to us

Join us for a 30 min session where you can share your feedback and ask us any queries you have

Schedule a call

Disclaimer: All third-party content on this website/platform is and will remain the property of their respective owners and is provided on "as is" basis without any warranties, express or implied. Use of third-party content does not indicate any affiliation, sponsorship with or endorsement by them. Any references to third-party content is to identify the corresponding services and shall be considered fair use under The CopyrightLaw.