Abstract

島根県松江市周辺には中新世~更新世の断続的な火成活動が認められる.本研究では,この地域で活動した和久羅山と嵩山を構成する火山岩について岩石記載および全岩化学分析を行った.この火山岩はこれまで和久羅山安山岩と呼称されてきたが,全てがデイサイトに分類されることから和久羅山デイサイトと再定義した.鉱物比および化学的特徴から和久羅山デイサイトはタイプⅠ,タイプⅡ,タイプⅢの溶岩に区分でき,層序的にこの順で噴出したと推定される.そして,和久羅山デイサイトはアダカイトの特徴を示し,スラブメルトの寄与が示唆される.このデイサイトの活動は約5 Maとされていることから,この頃にはフィリピン海プレートの先端が日本海拡大に伴う熱いアセノスフェアの上昇部に到達して部分融解を起こしていた可能性がある.和久羅山デイサイトは西南日本の背弧側におけるアダカイト火山群の萌芽的活動として位置づけられる.

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