Abstract
心不全の発症機序については依然として不明な点が多い.近年,酸化ストレスマーカーと心不全重症度との相関の報告などにより,酸化ストレスの心不全発症への関与が示唆されるようになった.心臓での酸化ストレスの主因の一つと考えられる活性酸素種はスーパーオキシドである.スーパーオキシドは,スーパーオキシドディスムテース(SOD)と呼ばれる酵素により過酸化水素に代謝され,過酸化水素は,カタラーゼによりさらに酸素と水に代謝され無毒化される.このようにスーパーオキシドは各種活性酸素種の前駆体となる点でも重要である.最近では,その生体内産生機序として,NADPHオキシダーゼの役割が注目されている.スーパーオキシドレベルの相対的増大(=酸化ストレス)の結果,心不全や心筋障害を発症するものと考えられる.現在までのところ,高血圧,糖尿病,肥満,炎症反応あるいは加齢など,一般に,心血管疾患のリスクファクターとなる病態でその可能性が明らかにされつつある.心臓での酸化ストレスを抑制する可能性がある薬剤として,スタチン,アンギオテンシンII受容体拮抗薬,ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体作用薬などがあげられる.しかしながら,麻酔薬が心臓への酸化ストレスを制御するか否かについては不明な点が多い.
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