Abstract

日本短角種の去勢牛16頭(約10ヵ月齢,平均体重329kg)を用いて,採食に伴うインスリン分泌 反応に対するサリノマイシン添加の影響を検討した.肥育牛を2群に分け,濃厚飼料を体重の0.6%および1.8%を給与する区を設けた.それぞれの飼料区の4頭にサリノマイシンを給与(200mg/頭/日)した.いずれの区でも粗飼料(アルファルファヘイキュウーブ)を自由採食させた.肥育期間を10ヵ月間とし,肥育開始後240および360日目に飼料給与後6時間にわたって血液およびルーメン液を経時的に採取した.サリノマイシン添加は増体量に有意な影響を与えなかったが,飼料要求率を14%改善した.サリノマイシン添加によってルーメン液のプロピオン酸濃度(モル%)は増加し,酪酸農度は低下した.酢酸濃度には影響を与えなかった.血漿グルコース濃度はサリノマイシン添加によって影響を受けなかった.サリノマイシン添加は濃厚飼料の給与水準の高い区で給飼後4-6時間の血漿インスリン濃度を増加させたが,濃厚飼料の給与水準の低い区では影響を与えなかった.給飼後6時間までのインスリンエリアは,サリノマイシン添加と濃厚飼料の給与水準間に有意な交互作用はなく,サリノマイシン添加によって有意に増加した.これらの結果から,サリノマイシン添加は採食に伴うインスリンの分泌反応を促進することが明らかになった.このインスリン分泌促進がサリノマイシンによる飼料要求率改善の一要因となると推察された.

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