Abstract
土壌の交換態放射性セシウム濃度と土壌の交換態カリウム濃度が,トマトの放射性セシウム吸収に関与する重要な因子であることを明らかにした。2011年夏に,福島第一原子力発電所から半径100km圏内の14試験圃場で,加工用トマトの放射性セシウム移行係数及び,吸収に関与する因子を調査した。放射性セシウム移行係数は0.00031~0.0072で,圃場ごとで異なった。土壌の交換態放射性セシウム濃度と果実の放射性セシウム濃度に正の相関(r=0.77,p<0.01)が,土壌の交換態カリウム濃度と果実への放射性セシウム移行係数に,負の相関(ρ=-0.65,p<0.05)が認められた。重回帰分析の結果,土壌の交換態放射性セシウム濃度,土壌の交換態カリウム濃度で果実の放射性セシウム濃度(Y)の73%を説明できることがわかった。カリウム1.5倍増肥区と慣行施肥区の移行係数を比較した結果,土壌の交換態カリウム濃度が低い圃場でのみ,カリウム増肥で移行係数が低下した。以上の結果から,土壌の交換態放射性セシウム濃度と交換態カリウム濃度は,トマトの放射性セシウム吸収に関与する重要な因子であることがわかった。また,土壌の交換態カリウム濃度が低い圃場ではカリウムを増肥することで,放射性セシウム吸収量を低減できることが示唆された。
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