Abstract

水分発散後水に不溶性の被膜を形成するpoly vinyl alcoholとpoly vinyl acetateを利用して柑橘のゴマダラカミキリの産卵を防止する方法について研究した。1) DDTおよびBHCの原末を同量のpoly vinyl alcoholで固めた被膜は6か月後までよく残存したが,本種の産卵を防止する効力は塗布12日以後不完全となり,このような方法で防除の完全を期することは困難であると考えられた。2) 消石灰をその2.5%量のpoly vinyl acetateで固めたwhite washは,脱落率大でその効力は塗布21日以後不完全となった。3) 消石灰をその5%量のpoly vinyl alcoholで固めたwhite washは前者よりは脱落率小さく効果が大きかったが,なお塗布31日以後不完全となった。4) 消石灰をその5%量のpoly vinyl alcoholおよび2.5%量のpoly vinyl acetateで固めた新白塗剤の脱落率は極めて小さく,産卵防止効果は全産卵期間を通じてほぼ完全であった。5) これら新白塗剤に殺虫剤を加える必要は認められなかった。6) 産卵を完全に防止するための新白塗剤の塗布6か月後における脱落率は7.8%以下,その硬度は732.1g圧以上と計算された。この期待値は良質の消石灰にそれぞれ5%量のpoly vinyl alcoholとpoly vinyl acetateを配することによって達せられた。7) 新白塗剤の塗布時期は,産卵が始まる前の6月上中旬が適当で,この時すでに産卵されている卵は削り取らなければならない。8) 本種は成木を好んで産卵するが幼木にも若干産卵するから,幼木といえども防除を怠ることができないので,この場合における防除法をも考察した。9) 木の肥大に伴って被膜に亀裂が生じたり,傷つけて剥ぎ落したりした場合には,同剤で補修すればよい。10) 塗布範囲は産卵されても大害とならない枝の細い部分にまで及ぶのが望ましいが,一応低仕立ての木では地上1mぐらいまで,高仕立ての木では太い主幹または主枝の分岐部より20cm位上部まで,または万一産卵されても容易に発見できる位置までとし,塗布部の境目に産卵されていないかを時々見廻るようにする。11) 塗布量は木の仕立方や大きさによって一定しないが,1∼2mmの厚さに塗布する。

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