Abstract

本研究は鳥獣類や害虫に対する忌避性あるいは食中毒菌における抗菌性の優れた天然由来揮発性化合物を有効活用するために徐放性能を有するポリ乳酸共重合体を基盤材とする徐放剤の開発を目的としている.本実験では,超臨界二酸化炭素(scCO2)を媒体として防虫効果や抗菌性の高いヒバ油を共重合体に含浸させ,含浸量は1H NMRで評価した.共重合体はL-ラクチド(L-LA)を主要なモノマーとし,ε-カプロラクトン(CL),テトラメチレンカーボネート(TEMC),1,5-ジオキセパン-2-オン(DXO)を共重合させ合成した.合成した共重合体を用いた含浸実験において,含浸量はポリ乳酸重合体(PLLA)よりも共重合体で高くなる傾向であったが,L-LA/DXO共重合体(PLLArDXO) (83/17)の含浸量は最も低く,L-LA/CL共重合体(PLLArCL) (82/18)の含浸量が最も高かった.含浸させた共重合体の機械的特性を評価するために引張試験を行い,含浸前後で比較検討した.その結果,応力はPLLAにおいて大きく低下したが,L-LA/TEMC共重合体(PLLArTEMC) (88/12)とPLLArDXO (92/8)は大きく増加した.このような傾向は,弾性率においても同様の結果であった.伸度はこれらの結果とは逆の現象がみられた.飽和塩化カルシウム溶液を用いた分解試験において,共重合体の分解にともなうフィルム中のヒバ油残存含油率と放出ガス量を測定し,ヒバ油放出性を評価した.PLLArDXOは最も早く分解され,分解途中以降においては,PLLArCLは急激に分解が進行することがわかった.ヒバ油残存含油率は,共重合体の分解速度に比例しており,分解されやすいPLLArDXOは,残存含油率の減少が早かった.

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