Abstract

東北地方北部の太平洋岸における長期間の地震・津波の履歴およびその規模を明らかにすることを目的に,青森県三沢市の低湿地において津波堆積物調査を行った.その結果,シルト層および粘土層中に挟在する2層のイベント砂層を検出した.上位のイベント砂層は人為的な擾乱によりその成因は特定できない.下位のイベント砂層は4,800〜2,900calBPに堆積したと推定され,海岸線から内陸約700mの地点から約1kmにわたって連続的に堆積し,内陸に向かって細粒化する.また,砂層中とその直上の粘土層中には淡水生珪藻だけでなく汽水生珪藻も含まれている.このイベント砂層は津波により形成された可能性もあるが,上位の地層からも汽水生珪藻が産出することから,背後の海成段丘構成層からの流れ込みによって形成された可能性も否定できない.また,周辺地域でこのイベント砂層に対比される津波堆積物の報告はなく,イベント砂層の成因を明らかにするにはさらに調査を進める必要がある.

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