Abstract

本稿の目的は,近代期の急激な工業化において早い段階で公害が発生した神奈川県川崎市臨海部を取り上げ,地域社会において人々がいかにして社会運動に参加したのかという視点から,社会運動の組織化の過程と特質を明らかにすることである..まず,当時の公害反対運動を自治体史や地方新聞の記事から再構成するとともに,運動における指導者の存在とその特質を浮き彫りにした.さらに近代期の日本における社会・政治的諸制度の変化と地域社会におけるその受容過程を踏まえながら,明治末期から昭和初期にかけてどのような地域組織が社会運動の組織化の基盤となったかを検討し,その類型化を試みた. 結果は次の通りである.近代期の川崎では,組織化の形態,利害関心の共有などによって,(1)近代期の地方制度が地域社会にまで浸透していない時期には旧村およびそのネットワークに基づいた組織(旧村型),(2)産業組合制度の普及による漁業協同組合などの同業者組織(同業者組織型),(3)近代期の地方制度が改良を経て整備されるとともに現れてきた住民組織(住民組織型),の三類型が抽出された.このような社会運動の組織化における推移は,川崎において近代期に見られた地域組織の再編と照応するものとなっている.

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