Abstract

木本類植物の耐凍性差の生化学的機構を明らかにするために, 厳寒期におけるリンゴ属植物 (Malus) 9種 (3品種を含む) を用いて, 耐凍性と過酸化物代謝の関連について検討した.1. リンゴ属植物の枝の耐凍性は次のように高低4階級に分けられた.低いもの: M. pumila var. domestica ('紅玉')M. hallianaやや低いもの: M. pumila var. domestica ('デリシャス'), M. asiaticaやや高いもの: M. pumila var. domestica ('旭'),M. prunifolia var. ringo, M. sieboldii,M. sieboldii var. arborescens,M. platycarpa高いもの: M. baccata, M. astracanica2. 過酸化物分解系の酵素活性は皮層部と木部のいずれにおいてもM. pumila var. domesticaの3品種とM.astracanica, M. asiatica, M. baccataで高く, M. prunifolia var. ringo, M. halliana, M. sieboldii, M. sieboldii var. arborescens, M. platycarpaで低かった.主要な過酸化物生成系である電子伝達系のNADH-CcRとCcO活性も同様の結果を得た. 皮層部と木部のいずれにおいても, 一部の例外を除いて過酸化物分解系の酵素活性と過酸化物生成系の酵素活性との間には有意の相関関係がみられ, 特にG6PDH活性とNADH-CcR (皮層部, r=+0.944**;木部, r=+0.877**) あるいはCcO活性 (皮層部, r=+0.973**;木部, r=+0.937**) との間に高い相関係数が得られた.3. NADH-CcR活性/G6PDH活性比あるいはCcO活性/G6PDH活性比を酸化ストレスに対する感受性を表す細胞内状態の指標 (oxidizability index, OI) と定義し, OI値と枝の耐凍性の関係を検討した. 枝の耐凍性と皮層部のOI値の間には一定の関係がみられなかった. しかし, 枝の耐凍性と木部のNADH-CcR活性/G6PDH活性比 (r=-0.793**) あるいはCcO活性/G6PDH活性比 (r=-0.662*) の間には負の高い相関係数が得られ, 枝の耐凍性は木部組織のOI値が高い種あるいは品種ほど低いことが示された.以上の結果から, 厳寒期におけるリンゴ属植物の枝の耐凍性は木部の過酸化物代謝と密接に関係しているものと考えられる.

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