Abstract

富山県におけるケヤマハンノキ天然林の遺伝的分化に基づく種苗配布区域について検討するため, 天然林13集団, のり面緑化施工地5集団, 治山施工地4集団の葉緑体DNAのハプロタイプについて調査した結果, 標高1,100 m以上のI型とそれ以下のII型の二つに分化していることが明らかになった。一方, のり面緑化や治山施工地で使用されている個体のハプロタイプは標高にかかわらずすべてII型であった。異なるハプロタイプの苗が植栽されていた高標高の地域では交雑による遺伝子撹乱の危険性が高いことから, 今後はハプロタイプを考慮した緑化が必要であると考えられた。そこで, ケヤマハンノキの地域性種苗の安定生産に向けて高標高の天然林の種子の豊凶について調査した結果, その年変動は非常に大きく, 毎年安定して種子を採取するのは困難であることが明らかになった。しかし, 種子の保存性は高かったことから, ケヤマハンノキの地域性種苗の安定生産のためには, 葉緑体DNAの分析結果をもとに採種林分を特定した後, 豊作年に大量に種子を採取して次回の豊作年まで貯蔵しておくことで対処できると考えられた。

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