Abstract

1.東京都江東区の東京営林署猿江貯木場に見られるように, 東京都内の低地域における貯木池は河水の汚染によつて, アカイエカを主とする蚊族の大発生源となり得る. 2.猿江貯木場において発生する蚊は, アカイエカを主とするが, これに夥しいチカイエカが共存し, さらにシナハマダラカ, コガタアカイエカが少量混じる.チカイエカが夏の初期よりこのような開放水域に多数出現していることは注目に価する. 3.ここのチカイエカの幼虫におけるp, p′-DDTに対するLC_<50>が17.78ppmにも達したことは特に注意を要する.またγ-BHCやdieldrinに対してもそれぞれ高い価を示した. 4.アカイエカ幼虫も塩素剤に対するLC_<50>は本邦の他地区のものに比して頗る高く, これらの薬剤を以てしては駆除は疑問である. 5.しかし有機燐剤では両種に対して高い効力を認めた.その順序は, Baytex, Sumithion, Nankor, DDVP, diazinon, malathion, Dibrom, Dipterexとなつた. 6.この水域のコガタアカイエカ幼虫およびシナハマダラカ幼虫に対しては, 塩素剤, 有機燐剤ともに高い殺虫効力をみとめた. 7.実地試験において0.3%DDVP油剤を平均1m^2当り60ccに相当するよう散布し, 約3〜4日間は幼虫の顕著な減少をみとめた. 8. 5%diazinon乳剤では50倍液を1m^2当り100ccの割合いで散布し, 約4日間幼虫の減少をみとめた. 9. 3%および1%Baytex浮遊粉剤では, 1m^2当り1〜2gを散布し, 約14日の顕著な効果を認めた. 10.各種の蚊の蛹に対しては, DDVP油剤は極めて効力が著しい. diazinon乳剤は, 今回の試験においては薬量不足とも考えられるが, 優れた効果を示さなかつた. Baytex浮游粉剤では油剤に劣らず効果がみとめられ, 当然2週間にわたつて蛹の出現をもおさえた. 11.ライトトラップ捕集によつて成虫を調査した場合, DDVP油剤散布の場合には, 散布4〜5日後に成虫捕集数の増加を認めたが, Baytex浮游粉剤では捕集数は激減し, 8月22日の散布以後においては成虫捕集は皆無となつた.

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