低分子量アクリル樹脂の特性に及ぼす重合温度の影響

Abstract

低分子量で高重合率の条件において, 酢酸ブチル中, アクリル酸n-ブチル (NBA) とメタクリル酸メチル (MMA) もしくはメタクリル酸 (MAA) とのラジカル共重合反応を120-170℃で行い, 重合温度の高温化が未反応モノマー量, 共重合体組成, モノマーシーケンス分布や樹脂の特性に与える影響について調べた。未反応メタクリレートモノマー量に及ぼす重合温度, モノマー濃度およびメタクリレートモノマー組成の影響により, 少なくとも150℃以上で反応を行うと平衡重合反応挙動が顕著に観察されることが明らかとなった。また, 単位時間当たりに生成する共重合体の組成は高温化によってほとんど変化しなかった。高温で得られたポリ (MAA-co-NBA) を4官能のエポキシ化合物と反応させると, 得られた架橋膜は低温で得られたポリ (MAA-co-NBA) を用いた系より高い架橋密度を示した。ポリ (MAA-co-NBA) をポリ (MMA-co-NBA) へ変換した後に1H-NMRを用いてモノマー連鎖を測定したところ, 高温化によるMMA連鎖の減少が確認された。このMMA連鎖, すなわちMAA連鎖の減少は架橋反応における立体障害を減少させるため, 高温化により架橋密度が増加すると考察した。