Abstract

広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センターでは原爆被爆医療法に基づく乳癌検診 (以下, 被爆者乳検) を1988年から施行し, さらに老人保健法に基づく乳癌検診 (以下, 老健乳検) を1989年から施行している。本報告では, 被爆者乳検の検診成績と老健乳検の検診成績を比較した。被爆者乳検では1996年度までに22,845名が受診し, 要精検者数は1,051名で要精検率は4.60%であった。精検実施者数は990名で62名の乳癌が発見された。すなわち, 精検受診率は94.2%, 乳癌発見率は0.27%であった。一方, 老健乳検では1996年度までに76,007名が受診し, 要精検者数は3,748名で要精検率は4.93%であった。精検実施者数は3,406名で67名の乳癌が発見された。すなわち, 精検受診率は90.9%で乳癌発見率は0.09%であった。受診者の年齢分布を検討すると, 被爆者乳癌では全例40歳以上で60歳から69歳の受診者が最も多いのに対し, 老健乳検では30歳から39歳の受診者が最も多く年齢が増すにつれて漸減していた。乳癌発見率は, 40歳以上の年齢層ではいずれも被爆者乳検の方が高かった。受診者の年齢層の変化を検討すると, 老健乳検においては受診者の年齢層の比率はほぼ一定であったのに対し, 被爆者乳検においては49歳以下の症例の割合が漸減する一方で70歳以上の受診者が漸増していた。被爆状況別に検討すると, 乳癌発見率は半径2km以内での直接被爆者において最も高かった。以上より, 被爆者の高齢化が進むなか, 被爆者の健康管理の一環として乳癌検診の重要性が示唆された。

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